【魔女兵器 翻訳】ACTIVITY.4_星尘降臨 PART.7 第7章_20190610修正
我本能的想要尽快离开这里,偷偷对小星尘使了个眼色,然后一言不发的朝着电梯大门走去。
她马上心领神会的小跑几步跟上来,留下在那里继续审问侍者的艾米莉欧。
小家伙似乎从我略显僵硬的动作中察觉到了不安的情绪,轻轻蹭了蹭我的手腕。
小星尘:
(小声)呐呐.........感到那从柔软肢体传来的温度,我的心境渐渐平静下来,默默拉住了她的小手。
就像达成了某种默契般,她露出一个灿烂的笑容。
说来奇怪,虽然是第一次见面,我却对她有种莫名的熟悉和亲切感。
而且刚才那些人,无论侍者还是士兵,为什么全都对她视若无睹呢?
在电梯里,我一边思考一边捏了捏小星尘软乎乎的脸,引起了她一阵抗议。
小怜:
(不过还好,这让人安心的触感和体温......)
或许这孩子和贝阿特丽切的情况类似,有着某种自己无法控制的特殊能力吧?
俺は本能的に早くここから離れたくなり、星尘に目配せをした。そして一言も喋らずにエレベーターの扉へと向かう。
彼女にも通じたのかすぐに小走りについてきた。エミリオはそのまま残り、ウェイターの尋問を続けている。
このちびっ子は俺の少し強張った動作から不安を感じ取ったのか、そっと俺の腕に身を摺り寄せた。
星尘:
(小声で)ね、ねぇ……
その柔らかな身体から温度を感じると、俺の気持ちは徐々に落ち着いてきた。そして黙って彼女の小さなを手をつかんだ。
ある種の暗黙の了解を得たかのように、彼女は鮮やかな笑顔をみせた。
不思議な話だ。初対面であるはずの彼女に、どこか馴染みがあるような気がして親近感さえ感じている。
それにさっきの連中もだ。ウェイターや兵士も、なんで彼女のことを無視していたんだ?
エレベーターの中、俺は考え事をしながら星尘のぷにぷにの顔をこねくり回す。しばらくの間、彼女から抗議の声が起きる。
レン:
(でもまぁ、なんか安心する感触と体温だな……)
もしかしたらこいつはベアトリーチェのケースと似ているのかもしれない。自分では制御できない特殊能力があるみたいな?
正当我胡乱猜测着种种可能性,电梯已经带我们回到了赌船的VIP区。
随着厚重的电梯大门缓缓打开,我才意识到事态的严重性―――
几十名乘客和工作人员被装备自动武器的马萨达士兵控制在大厅,分成四人一组正接受安检。
记录员拿着军用的平板设备,无视客人们的抗议接个给他们拍照建档。
大厅的墙壁上挂着定向信号干扰装置,那些想打电话联系高层关系的客人们纷纷拿着手机一筹莫展。
我的手机和耳机此时也收不到任何信号,小星尘看到这幅阵仗,本能的缩到了我身后。
大厅出口处,一个军官样子的人用扩音器宣读着接受安检时的注意事项。
色んな可能性を想像していたところで、エレベータはカジノ船のVIPエリアに連れてきてくれた。
重厚なエレベーターの扉がゆっくりと開く。そしてようやく俺は事態の重大さを理解した―――
何十人もの乗客と従業員が、自動火器を装備したマサダ兵士によってホールで制圧されている。そして4人1組に分かれセキュリティーチェックを受けていた。
調査員は軍用のタブレット機器を持ち、乗客の抗議を無視しながら彼らの写真を撮影している。
ホールの壁には指向性の信号妨害装置が掛けられている。懇意にしている大物や有力者に電話で連絡しようとしている客達は、携帯電話を持ちながら困惑しているようだ。
俺の携帯とイヤホンも電波が通じない。星尘もこの深刻な局面を目の当たりにすると、本能的に俺の後ろへと身を縮こませた。
ホールの出口では、軍官姿の人が拡声器でセキュリティーチェック時の注意事項を読み上げていた。
军官:
全部手表、首饰和金属物品都要摘下来接受检查。
个人包裹和行李箱要在建档后贴上识别码,集中在这边进行扫描。
全部检查通过后会得到一个蓝色手环,戴着手环的 人才可以离开大厅!
小怜:
这么严格的吗?!
我看了看手腕上的蓝色手环。
小怜:
(这说明我......已经通过检查了?)
(还、还是先看看情况吧......)
环视四周,我发现这一层的军人中只有那个军官是女生,而且她和刚才的艾米莉欧一样都很年轻。
让我有些不解的是,那些穿着蓝色迷彩作战服的海 军士兵们似乎都很服从这个人。
小怜:
(看起来也就是高中生或者刚上大学的年纪吧.........)
突然,一个硕大的身影不顾阻拦冲到大厅门口并朝军官大喊起来。
米勒:
我是南印度圣公会的米勒总主教,你们无权盘查神职人员!
而且你这身根本不是马萨达国防军的军服吧?
你到底是什么人?这次行动是谁授权的?
我要求和你的长官谈话!
总主教大人像座小山一样站在那个女生面前,气势咄咄逼人。
军官:
啊?这身当然不是国防军的军服了.........我是临时指挥准尉薇拉·瓦尔基里。
你刚说你是南......南印度的什么玩意儿?啊!是税务官之类的吧~
薇拉好似恍然大悟的打量着面前的男人,自言自语的说道。
薇拉:
怪不得吃成这样..........
不过那破地方不是一直在"打仗"吗?能收上税来?
她全然不顾主教大人已涨红的脸,心不在焉地接过记录员递来的平板设备。
薇拉:
啦~神职人员签证啊.........。
薇拉不屑的笑了笑,接着看向不远处的轮盘赌桌。
薇拉:
呵呵,原来是教廷的人,怪不得白白胖胖的,您老人家刚才玩的尽兴吗?
我还以为上帝不会掷骰子呢~
米勒:
你说什么!!?
总主教大人终于绷不住了,大叫着上前两步一副要打人的样子,却被薇拉一手薅住了领子。
我不由倒抽一口凉气―――
那个身材肥硕的总主教被薇拉用一只手卡住脖子时, 双脚稍稍的离开了地面。
小怜:
(那是什么怪力啊!!)
薇拉:
啊..........你要是没听清楚我就再说一遍―――
我可不是什么士兵,而是被临时分配来处理这种破事的『塔楼计划』学员。
军事委员会的那群混蛋,觉得随便安一个临时军衔 就能对我们呼来喝去。
我已经忍耐好几天了,你若是想惹事,我马上就把你去海里喂鲨鱼!
听清楚了吗!?
此时男人的脸颊已经涨得发紫,无法发出声音的他忙不迭的点了点头。
薇拉:
滚那边排队去!
终于被松开的总主教大人跟跑后退几步,捏着脖子喘了几口粗气,然后悻悻的走向安检队伍。
小怜:
那个,请问.........
我小心翼翼的凑过去,晃了晃腕上的手环。
小怜:
拿到这个就可以出去了是吗?
薇拉似乎有些意外,用平板对着我手环上的条形码扫了一下,随后露出一个微笑。
薇拉:
嗯,没问题,你可以离开了。
我稍稍松一口气,同时暗自庆幸这层的人也看不到小星尘。
刚走出门,大厅外的一位赌船工作人员就走过来对我再三表示抱歉。
他说关于今天的事莱博娜会与马萨达进行交涉,绝对确保客人资料的保密性。
现在船舱内全部处于信号屏蔽状态,他说我想要打电话的话可以用有线线路或者去船尾甲板。
軍官:
腕時計、アクセサリー、金属類は全て外して検査を受けなければならない。
カバンとスーツケースは、書類作成したのち識別番号を貼りつけなければならない。それからこちらに集めてからスキャンを行う。
そうして全ての検査に合格すれば青いリストバンドが手に入る。このバンドをつけている奴だけがホールから出られるからな!
レン:
そんな厳しいのか!?
手首の青いリストを見る。
レン:
(つまりこれって……俺は検査に合格したってことだよな?)
(と、とりあえず様子を見てみるか……)
周囲を見回してみる。このフロアの軍人の中でもあの軍官だけが女であることに気づいた。しかもさっきのエミリオと同じで年若い。
だというのに、青い迷彩軍服を着た海軍兵士達はあいつにかなり従順的みたいだ。ワケが分からん。
レン:
(見たところ、高校生か大学に入学したばっかしって感じなんだけど……)
突如、1つの巨大な影が制止を振り切りホールの入り口に飛び出す。そして軍官に向かって大声で叫んだ。
ミラー:
私は南インド聖公会のミラー総主教である。貴様らなぞに聖職者を尋問する権利などないわ!
それに貴様のその恰好、マサダ軍の軍服じゃないではないか?
一体何者だ?この行動は誰が許可した?
貴様の上官と話をさせろ!
総教主様はあの女性の前に小山のようにそびえ立つと、ものすごい剣幕で迫っていった。
軍官:
はぁ?これが国防軍の軍服なわけないだろ………私は臨時指揮をしているヴィラ・ヴァルキューレ准尉だ。
お前は南……南インドの何って言ったんだ?あぁ!税務官とかそんなもんか~。
ヴィラ:
ククク、教皇庁の人間だったのか。どうりで色白でぶくぶくと太っているわけだ。ご老公も先程まで随分とお楽しみでいらっしゃたようですな?
てっきり神はサイコロを振れない*1もんだと思っていたな~。
ミラー:
何だと!!?
総主教様はとうとう抑えられなくなったのか、大声で叫びながら2歩ほど前に出て殴りかかろうとする。それをヴィラは片手で襟を掴むと持ち上げたのだ。
思わず俺は息を呑む―――
あのでっぷりとした総主教の首がヴィラの片手で押さえられ、両足も少し地面から浮いていた。
レン:
(何て怪力なんだ!!)
ヴィラ:
あー……ちゃんと聴こえていなかったようだからもう一度言ってやる―――
私は兵士ではない。このような事態を処理するために一時配属された『タルピオットプログラム』の学生だ。
軍事委員会のクソッタレ共は、臨時の階級さえつければ私達を何でも指図出来ると思っていやがるがな。
私だってもう何日も我慢しているのだ。お前が面倒を起こしたいというなら、今すぐにでも海に連れて行ってサメの餌にしてやるぞ!
分かったか!?
男の頬は紫色になっていた。声を出すことが出来ない彼は慌てて頷く。
ヴィラ:
あっちに並んでろ!
やっと解放された総主教様は数歩後ずさりすると、首を押さえると少し荒い息をついた。そして怒りを露にしながらセキュリティーチェックの列へと向かった。
レン:
あ、あの、その……
俺はビクビクしながら近寄り、手首のバンドを振り動かした。
レン:
これ貰ってたら外に出てもいいんだよな?
ヴィラは何か意外な事があったかのようだ。俺のリングのバーコードにタブレットを向けると微笑みを浮かべた。
ヴィラ:
ああ、問題ない。もう行っていいぞ。
少しホッとした。同時にこのフロアの人間も星尘が見えなかった事をひそかに喜ぶ。
扉を出た途端、ホールの外にいた船の乗組員がやってきた。そして何度も俺にお詫びをしてきた。
今日のことについてはリバーナが後日マサダに交渉する、またお客様に関する資料のプライバシーについては絶対に確保するとのことだ。
また現在船舶内は全て信号遮断状態で、もし電話をかけたい場合は有線を使用するか船尾甲板に行けばいいとも教えてくれた。
我拉着小星尘一路来到甲板上。
船舷的一侧停靠着最新型的超级德沃拉巡逻艇,旗杆上挂着马萨达标志性的蓝白两色国旗。
小怜:
啊——总算能出来透透气~
(赌场里所有窗户都是封闭的,快闷死我了。)
我看着横跨运河的大桥舒展了一下双臂,这条人工河道的两岸一直延展到视野的尽头。
小怜:
这就是苏伊士运河吧?
小星尘:
哇——!
小星尘比我还兴奋,蹦蹦跳跳的跑到了栏杆前。
小怜:
(不过怎么是船尾对着这边...?)
突然手机响起,我赶忙接通,听筒中传来了久违的声音。
安妮:
小怜!你没事吧?莉琉:
她没事,正对着大海做扩胸运动呢。
爱衣:
哦呀呀,真是充满青春的气息是想让身体吸满养 料再发育一下吗?~
安妮:
这是多方通话,莉琉她们也在线上......
小怜:
诶?!
我立刻四下环视,并没发现监控之类的设备,才想起她们大概是从高空观察到的。
小怜:
(天上有双眼睛盯着自己总觉得怪怪的......)
莉琉:
你就别捂了,先做个简报。
小怜:
呜呜......
我清清嗓子,汇报了在保险库发现小星尘的全过程,特别强调别人都看不到她这件事。
安妮:
那孩子现在就在你身边?我在监控里确实只看到你 一个人穿过大厅.........
当时我还在想你怎么这么快就做完安检了,你可是第一个出来的!
小怜:
是去保险库检查的一个海军少尉,她只读取我身份 卡上面的内容就把通过的手环给我了。
莉琉:
马萨达的海防部队不应该这么松懈...小怜:
还有,好像赌场大厅的军官和保险库的少尉都是不 到二十岁的女孩子......
安妮:
怎么会?虽然马萨达的女性也要服强制兵役,但这个年纪也......
小怜:
对了,我听到大厅的那个军官说自己是什么“塔楼计划”学员,这是被临时分配的任务。
莉琉:
那就难怪了―――
塔楼(Talpiot)是直属于马萨达国防总参谋部的 精英军校,有几十年的历史了。
马萨达军方后来将其升级为塔楼计划,只从中学生和一般军校招收前1%的顶尖学员参与选拔。
然后在心理、体能和智力测试中严格筛选,每年只有几十人能被正式录取。是个专门培养高级军官和军事科技人才的地方,课程中确实会参与指挥小规模的军事行动。
『摩诺拉』里也有不少塔楼计划的学员,从那里出 来的家伙虽然都是精英,但很难被策反。
小怜:
就是某种精英学校吧......
安妮:
总觉得......我和小怜都不可能考上呢。
爱衣:
呐,小怜。
爱衣的语气带着些许迟疑。
爱衣:
你说的那个小孩子,此刻正跟你一起在甲板上吗?
小怜:
对啊,怎么?
爱衣:
可是热成像显示,现在甲板上的确只有你一个人......
我心中一惊,扭头看看蹲在栏杆前的小家伙,一直在出神的盯着某个方向。
她忽然站起来,耳机上的金光快速闪烁,指向自己刚才盯着的方向。
小星尘:
我们......要去那边!
虽然忘记了为什么,但感觉必须去那个方向的什么地方不可。
不然就......不然就糟糕了......!
吶吶吶!我们一起去......好不好嘛?
小星尘拉住我的手来回摇晃,眨巴着大眼睛,就像 要赖想要妈妈给自己买玩具的小孩子一样。
小怜:你们......听到她说的了吗?
安妮:我一直只听到你的声音啊...
爱衣:
如果没有实体的话,是无法震动空气发出声音的。
小怜:
可、可我明明能感觉到!她的触感和温度……
爱衣:
从你的描述看来,很可能是你的大脑被某种东西影 响,产生了只有你能体验到的神经反馈。
小怜:
不是吧......我连她的影子都能看到!
我试着辩解,实在无法接受这个与自己的感知完全矛盾的解释。
莉琉:
......你用手机的摄像模式试试看。
我立刻照做,可当我用镜头对准她的时候,顿时感觉头皮一阵发麻―――
屏幕上的取景框内空空如也,全然没有她的身影。
可当我将手机挪开,又能看到她鼓着小脸央求的样子。
小星尘:
好~~不~~好~~嘛~~
我不死心的在手包里寻找,翻出那个从她手腕取下写着她名字的粉色小纸条。
但当我将手机对准那个纸条时,却发现自己手上什么都没有。
手机挪开后,那个小纸条也消失不见了。
我伸出有些颤抖的手,把手机放在小星尘的头顶。
“啪嗒”一声,手机直接掉落在她脚下的甲板上。
小星尘:
?
我只觉耳边嗡嗡直响,四肢忽然变得沉重起来。
过了一小会儿,我的耳机中传来了爱衣的声音。
爱衣:
我有一个理论,或者说是猜测.........
小怜:
什、什么猜测?
爱衣:
你之前唤回的魔女,不仅能为她们制造出实体,而且都保留着完整的记忆。
但根据你描述她的失忆情况,再加上没有实体,或许是缺失了某些条件?
她有表达什么诉求吗?或许是某种提示?
小怜:
诉求......有的!
我像是抓住什么救命稻草般,指向了她刚才说的方向。
小怜:
她说她要去那边,但不知道具体是哪,就是我手指的方向。
听筒中立刻传来一阵敲打键盘的声音。
莉琉:
那个方向前方318公里.........
爱衣
就是马萨达堡。
俺は星尘を引き連れて甲板に出てきた。
舷側には最新型のスーパードヴォラ哨戒艇*2が横付けしており、旗竿にはマサダの象徴的な青と白の2色国旗が掲げられている。
レン:
あーーー。やっと新鮮な空気が吸えたな~。
(カジノの窓は全て閉まってたし、窒息するとこだった。)
運河にまたがる橋を見ながら俺は両腕を広げた。この人工河川の両岸は、視野の果てまでずっと延びている。
レン:
これがスエズ運河ってやつか?
星尘:
わぁーーー!
星尘は俺以上に興奮していて、ぴょんぴょんと跳ねると手すりの前まで走っていった。
レン:
(でもなんで船尾がこっちを向いているんだ……?)
突如、携帯が鳴る。俺は急いで繋ぐと受話器の中から久しぶりに声が聞こえた。
アニー:
レンちゃん!大丈夫なの!?
マリル:
あいつなら大丈夫だ。海に向かって胸を張る運動をしている。
愛衣:
おやおや~。なんとまぁ、青春に満ちた息吹を身体にいっぱいに吸い込んで、その栄養でまた発育するつもりなのかなぁ~?
アニー:
これってマルチ通話なの。マリルさん達もオンラインで……。
レン:
えっ!?
すぐにあたりを見回すものの、監視するような装置は見つからなかった。恐らく上空からの監視だったのではないかと思われる。
レン:
(空に俺をじっと見つめる目があるなんて、何か変な感じ……)
マリル:
お前も胸を隠していないで、まずは状況説明をしろ。
レン:
うう……
俺は咳払いし、保管庫での星尘発見の全過程を報告した。特に彼女が他の人には見えない点を強調して。
アニー:
その子って今もレンちゃんの傍にいるの?レンちゃん一人だけがホールを通り抜けるのを確かに見たのだけど………。
あの時はどうしてそんなに早くセキュリティーチェックが終わったんだろうって思ってたの。だってレンちゃんが一番最初に出てきたのよ!
レン:
保管庫の検査に入った海軍少尉なんだけど、俺の身分証の中身をスキャンしただけで通過証のリストバンドをくれたんだ。
マリル:
マサダの海防部隊がそんな弛んでいるわけがない……
レン:
それと、カジノホールにいた軍官と保管庫の少尉は二十歳未満の女の子みたいなんだ……。
アニー:
嘘でしょう?たしかにマサダの女性には強制兵役があるけれど、それにしたってその年齢じゃあ………。
レン:
そういえば、ホールにいた軍官が言っていたな。自分は『タルピオットプログラム』の学生で、これは一時的に割り当てられた任務だって。
マリル:
それなら合点がいく―――
タルピオット(Talpiot)*3は、マサダ国防総参謀部に直属するエリート軍学校で、数十年の歴史を持つ。
マサダ軍は後にタルピオットプログラムを更に改良し、中学生と一般軍事学校から上位1%の学生だけを選抜し採用した。
そこから更に心理、体力や知能のテストによって厳格に選別し、毎年数十人だけが正式に採用される。
上級士官や軍事科学技術者の育成に特化した場所であり、授業の中には小規模な軍事行動を指揮するというのも確かにあったはずだ。
『マノーラ』には多くのタルピオットプログラムの学生もいる。そこから出てくる奴らはみな精英でな、離反工作も困難なんだ。
レン:
ある種のエリート学校ってやつか……
アニー:
何となくだけど……私とレンちゃんは受からなそうだね。
愛衣:
ねぇ、レンちゃん。
愛衣の声には少しためらいの色が混じっていた。
愛衣:
レンちゃんの言っている子供って、今も一緒に甲板にいるのかい?
レン:
そうだけど、どうした?
愛衣:
でもサーモグラフィーの表示では、現在甲板にいるのは間違いなくレンちゃん一人だけなんだ……。
俺の心がドキっとする。振り返って、手すり前にうずくまっている小さな子供を見た。なにやら夢中になってある方向をずっと見つめていた。
すると彼女は突然立ち上がり、ヘッドホンの金色の光をキラキラとさせた。そして自分が見つめていた方向を指さしたのだ。
星尘:
私たち……あっちに行かなきゃ!
なぜだか忘れちゃったけど、あの方向のどこかに行かなきゃいけないような気がするの。
じゃないと……じゃないと大変なことになっちゃう……!
ねえねえねえ!一緒に行こうよ……いいでしょお?
星尘が俺の手をつかんで揺らし、その大きな目をパチパチとさせている。まるで母親におもちゃをねだる子供のようだ。
レン:
みんな……彼女の話を聞いたか?
アニー:
私にはずっとレンちゃんの声しか聞こえていないけど……
愛衣:
実体がなければ、空気を振動させ音を出す術がないんだ。
レン:
で、でも確かに感じるのに!彼女の感触や体温だって……
愛衣:
レンちゃんの説明から考えるに、レンちゃんの脳は何かの影響を受け、レンちゃんだけが体験できる神経フィードバッグが生まれている、という可能性が高いね。
レン:
う、嘘だろ……俺には彼女の影だって見えてるんだぞ!
俺は申し開きをする。自分の知覚と完全に矛盾しているその解釈はとてもじゃないが受け入れらない。
マリル:
……お前の携帯の動画モードを試してみろ。
すぐに言われたとおりにする。しかし彼女にレンズを向けた途端、急に頭が痺れてきて―――
画面のフレーム内は空っぽで、彼女の姿はどこにもなかった。
しかし携帯をずらすと、膨れ面でせがんでいる彼女の小顔が再び見えた。
星尘:
い~~い~~で~~しょ~~
俺は悪あがきにバッグの中を探した。そして彼女の腕にあった彼女自身の名前が書かれたピンクの紙切れを取り出す。
しかし携帯をその紙片に向けると、手に何もないということが判明した。
携帯をずらす。するとあのメモが消えてしまった。
俺は震える手を伸ばして、携帯を星尘の頭の上に置いてみる。
"パタッ"と音がし、彼女の足元の甲板に携帯が落ちていた。
星尘:
?
耳の中でガンガンと音がし、手足が急に重たくなってきた。
しばらくすると、イヤホンの中に愛衣の声が響いた。
愛衣:
私には理論、あるいは推測とも呼べるものがあるんだけど……
レン:
ど、どういう推測だ?
爱衣:
レンちゃんが呼び戻した魔女には、彼女たちのための実体が作られているだけじゃなくて、完全な記憶も保持しているんだ。
でもレンちゃんが説明する状況では、彼女は記憶喪失で更に実体がないときている。ひょっとして何か条件が欠けているんじゃないのかな?
彼女は何か要求したりしていないかい?何かのヒントになるかも?
レン:
要求……あるぞ!
俺は藁にも縋る思いで、彼女がさっき言ってた方向を指さした。
レン:
彼女はこっちに行きたいと言っているんだ。でも具体的にどことかはわからなくて、ただ俺が指した方向ってだけで。
受話器の中からすぐにキーボードをたたく音が聞こえてきた。
マリル:
その方角から318キロ先……
爱衣:
マサダブルクだね。
*1:神はサイコロを振れない。元はドイツ語で"Der Alte würfelt nicht."。かのアインシュタンの名言で、量子力学の不確定性原理に対する反論として述べられた言葉。詳しくはこちらから。
*2:IAI(イスラエルの軍需企業)が製造した最新型の哨戒艇。Mk.Ⅱ級(1996年製造)やMk.Ⅲ級(2004年製造)といったものが実在するが、魔女兵器世界では更に先を進んでいると思われる
*3:イスラエルに実在するトレーニングプログラム。イスラエルでは18歳になると兵役の義務が発生する。このときに最も優秀な上位30名ほどが選抜される。選ばれたものは諜報活動部隊「8200部隊」に編入するためのトレーニングプログラム(=タルピオットプログラム)を受ける事となる。なお2018年時点では18歳の若者はおよそ1万いるとされ、その倍率は300倍を超える。